秋のはじまり、彼岸花を見ると、「ごんぎつね」を思い出します。
毎年、小学4年生の教科書に掲載される、悲しいラストが印象深い童話です。
1分でわかる簡単なあらすじです。
新美南吉の原作との違いもまとめてみました。
「ごんぎつね」の簡単なあらすじ
「ごん」というひとりぼっちの小ぎつねと、
病気の母親と一緒に暮らす「兵十(へいじゅう)」のお話です。
ある秋、いたずら好きなごんは、兵十の捕った魚やウナギを逃がしてしまいます。
しかし、十日ほど経ったある日、兵十の母親の葬列を見たごんは後悔します。
あの時のウナギは、兵十が母親のために用意したもので、母親は食べたいと言いながら死んでしまったのではないかと思ったからです。
自分と同じひとりぼっちになってしまった兵十へ罪悪感を抱いたごんは、
いわし売りから盗んだいわしを、兵十の家へ投げ込みます。
しかし、兵十は泥棒と間違われていわし売りから殴られてしまいます。
反省したごんは、栗や松茸を採っては毎日兵十の家まで届けます。
そうとは知らず、兵十は「神様が一人身になった自分を哀れんで食べ物を施してくれているのだ」と思い込みます。
ある日、ごんが家に忍び込んだ気配に気付いた兵十は、
またいたずらに来たと決めてかかり、火縄銃でごんを撃ってしまいます。
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは。」とつぶやく兵十。
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなづくのでした。
青い煙が、まだ筒口から細く出ているのでした。
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ハードカバー
文庫本
「ごんぎつね」と新美南吉・鈴木三重吉
「ごんぎつね」は、新美南吉(1913〜1943年)の代表作で、18歳の若い頃に執筆したものです。
新美南吉が幼少の頃に聞かされた口伝を基に創作したそうです。
しかし、小学4年生の国語の教科書に載っている「ごんぎつね」の文章は、鈴木三重吉(すずきみえきち、1882〜1936年)という小説家・児童文学者が編集したものです。
鈴木三重吉により、30箇所以上の編集が加えられて全国へ普及していったと言われています。
「ごんぎつね」の編集が加えられたポイント3つ
「ごん狐」から、「ごん」へ
もともとのタイトルは「ごん狐」と漢字を使っており、文中でも「ごん狐」と表現されていました。
それを、「ごん」という愛称に変えることで読者が親しみを感じやすくしています。
物語は、「ごん」の視点で描かれていますから、より感情移入もしやすくなりますね。
兵十の家に納屋と物置があること
最後のシーンで、「ごんが栗を置く場所」と「兵十が火縄銃を取りに行く場所」を分けるため、納屋と物置の2つがある家に変えました。
ぼろぼろの着物を来た兵十は貧乏なのに、納屋と物置の2つもある立派な家に住んでいるのは違和感を感じますが、、、
ラストのシーン
鈴木三重吉が最も大きく変えたのはラストのシーンです。
火縄銃で撃たれたごんを新美南吉は、「ごん狐はぐったりなったまま、うれしくなりました。」と書いています。
これを「ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなづくのでした。」と変えました。
小学校では、「最後に撃たれたごんは、どんな気持ちか?」と発問し、子供たちに考えさせることが多いのですが、
その答えをあえて語らず、読者の想像に任せるというラストに変えたのです。
新美南吉が考えたラストシーンというのは、「撃たれて死んでしまう悲しい結末」ではなく、「ずっとひとりぼっちだった「ごん」が最後に兵十に理解され、心が通じ合ったうれしさ」だったのかも知れません。
「ごんぎつね」のあらすじと新美南吉の原作の文章のまとめ
以上、「ごんぎつね」のあらすじと新美南吉の原作の文章を紹介しました。
はじめに「悲しいラストが印象深い童話」と書きましたが、新美南吉の文章を知ることで、また違った見方ができるような気がします。
新美南吉の故郷である愛知県半田市では、ごんぎつねにも出てくる彼岸花を矢勝川に約300万本植え、毎年9月末から10月にかけて「ごんの秋まつり」を開催しています。
素敵な場所ですから、皆さんもぜひ、訪ねてみてください!