
こんな人に向けて書いています。
・木の家の良さがよくわからない人
・家づくりを失敗したくない人
そういう人に向けて、木の家のメリット、デメリットについて、わかりやすく説明します。
木の家の定義

これからお話しする「木の家」とは、
- 柱や梁などの木の構造体が室内に露出している建物
- 本物の木材を床、壁、天井などの仕上げ材として使っている建物
をイメージしています。
というのも、10年ぐらい前から建材のプリント技術が急速に発達し、木目をプリントしただけの素材がとても多いからです。


例えば、上のショッピングセンターの写真。
どの部分が本物の木なのか、わかるかな?

うーん!
床にも壁にもいろいろな木が使われているようね。

実は、すべて木目がプリントされた建材ばかりなんだ。
建築基準法で可燃材の使用が禁じられているんだよ。
木目がプリントされた建材は、表面を固くすることで耐朽性を高めたり、汚れにくくすることができます。
しかし、本物の木のような柔らかさや香りはありません。
見た目はかなり本物に近いため、間違えないように注意してください。
木の家のメリット
温かみのある、やさしい印象の木のインテリア

木の家は、木の持つ温かみや香りにより、日々のストレスをやわらげてくれます。
しかし、木ばかりですと、山小屋のような素朴なインテリアとなってしまいます。
ある程度、白い素材を組み合わせることをおすすめします。
しかも、白色が加わることにより、木の温かみや優しい印象がより際立ちます。
自然素材である珪藻土や漆喰(しっくい)などを使用するのが良いでしょう。
木の家で素足のまま、生活できる喜び

無垢材のフローリングは、1年を通してほとんど素足で生活できます。
なぜなら、木は熱伝導率が低く、断熱性が高いからです。
素足で歩くには、表面の仕上げはオイル塗装をおすすめします。
オイル塗装は、木の内部に浸透するため、足裏の触感がさらっとしていて気持ちいいからです。
さらに、木は柔らかく衝撃を吸収しますので、足が疲れにくく、子供や高齢者に優しい素材と言えます。
体にやさしい木の家の調湿効果

日本は、湿気の多い梅雨もあればカラカラに乾燥した冬もあり、1年を通して湿度差の激しい気候です。
そのような湿度の変化に対し、木は水分を吸収、放湿することで室内の湿度を50%前後に保とうとします。
私たちが快適に感じる湿度は40%から60%と言われています。
低湿度の場合、粘膜が乾燥してインフルエンザウィルスなどに感染しやすくなります。
逆に高湿度の中では、カビや雑菌の繁殖、結露が発生します。
常に湿度を調節する木の家は、体に優しい健康的な住まいなのです。
生活雑音を軽減する吸音効果

木は、鉄やコンクリートに比べて音の反響が少なく、吸音効果があります。
これは、木の多孔質な形状による効果です。
低音、中音、高音をバランスよく吸収し、音がまろやかにすると言われています。
私たちは日々、エアコンや換気扇などの生活雑音に囲まれて生活しています。
木は生活雑音を吸音し、ストレスを軽減してくれるのです。
地震や台風に強い構造

木造は、圧縮や引張、曲げなどに強い構造です。
同じ重量の強度を示した比強度で木、鉄、コンクリートを比較してみると
- 圧縮:木950kgf/cm2、鉄445kgf/cm2、コンクリート100kgf/cm2
- 引張:木2250kgf/cm2、鉄509kgf/cm2、コンクリート10kgf/cm2
- 曲げ:木2800kgf/cm2、鉄182kgf/cm2、コンクリート7kgf/cm2
このように、木の比強度が最も高いことがわかります。
地震時の振動エネルギーは建物の重力に比例して重いほど大きく揺れます。
しかし、木造は軽いため揺れが小さいのです。
また、地震や強風で大きな力を受けたとしても、変形しながら外力をしなやかに逃がします。
木造は、地震や台風の多い日本の風土に適した構造と言えます。
消臭、殺菌など、木の家の化学的な作用

多くの木には、フィトンチッドという香りの成分が含まれています。
このフィトンチッドは、木が生きてゆくために放出する揮発成分です。
傷口を殺菌したり害虫が近寄らないような役目を果たしています。
私たちが森林浴などで感じる、爽やかで清々しい木の香りでもあります。
建材となってもこのフィトンチッドの効果は続き、殺菌、防虫効果によるシロアリやダニ、カビの対策などに使われています。
また、木は自然素材のため、ホルムアルデヒドなどの有害物質を放出しません。
シックハウス症候群やアレルギーなどの心配もなく、安心して暮らすことができます。
デザインが楽しめる

木は軟らかく加工しやすい素材です。
素人でも扱いやすいため、DIYの材料としても頻繁に利用されています。
造形の自由度が高く、自分好みのおしゃれな空間を再現しやすいのです。
木の種類を変えることにより、色や木目、硬さなど様々な風合いを楽しむこともできます。
特に木目は、丸太からの加工方向によって柾目(まさめ)と板目(いため)があり、同じ樹種であっても見た目の印象を変えることができます。
木の家は建築費用が安い

一般的に木造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造に比べて建築費は安いと言われています。
主な理由としては、
- 木造は重量が軽いため基礎が簡易
- 鉄筋コンクリート造は型枠、鉄骨造は防錆処理や耐火被覆のように手間がかかる
が上げられます。
国土交通省の建築着工統計調査によると、それぞれの一戸建ての坪単価予定額は、木造56.1万円、鉄筋コンクリート造95.7万円、鉄骨造92.4万円と木造が最も安価となっています。
地球環境にやさしい木の家

木材は、適切な量を使い、伐採しても植えて育てることで枯れることなく使い続けられる資源です。
また、木材を使うことは、木材の中に固定された炭素を蓄えることになり、二酸化炭素の排出を抑え、地球温暖化防止にも貢献します。
そのため、国内の様々な地域で、地産地消による木の家づくりが推奨されています。
森林や地球環境の保全に加えて、地場産業の復興策としても期待されているのです。
木の家のデメリット
ローコスト住宅にならない

木の家は、木材自体が家の中に露出しているため、柱や梁の構造体にも化粧材を使用します。
化粧材というのは、色や形、木目が比較的きれいな木材のことを言います。
また、柱と梁の接合部は、武骨な鉄金具が見えないように鉄金具を隠すなどの構法が必要です。
そのため、天井裏に構造体を隠してしまう住宅に比べると建設費はやや高くなってしまいます。
また、木には節があります。
意匠にこだわり節の少ないきれいな木目の木材に限定すると、さらに高額となります。
節は、見た目だけでなく経年劣化により収縮して「ぽろっ」と取れてしまうことも嫌われます。
しかし、人にほくろがあるように、節も木材の個性の一つです。
素材の趣として楽しむぐらいの気持ちを持てば、気にすることもなくなるでしょう。
木の家は火に弱い可燃性

木目のプリントされた建材が売れるのは、耐久性や防汚性に加えて火に強い性能が理由とも言えます。
難燃や準不燃、不燃という防火材料として作りやすいのです。
木材も特殊な加工により、燃えにくくすることはできます。
しかし、高額となるため可燃材のまま使用されることがほとんどです。
火を扱うキッチンまわりは、不燃材のタイルやパネルなどを使いましょう。
また、住宅用火災警報機を設置するなど、火災対策に注意しましょう。
木の経年劣化

新築直後の木は白に近い色をしています。
白木(しらき)とも呼びますが、やがて年月が経つとともにあめ色に変色します。
しかし、これはデメリットではないでしょう。
ビニルクロスなどの工業製品は、汚れる一方です。
対して、木の変色は味わいを増すものとも捉えられます。
変形による割れや隙間、反り

木は、気温の変化に伴って伸縮や膨張を繰り返すため、割れや隙間、反りが生じます。
新築時に「パキッ」と木が割れる音がするのをご存知ですか。
乾燥が進むことで梁が反り、割れが広がってゆくのです。
また、無垢材フローリングの目地は通常5mm程度ありますが、夏場は膨張し、フローリング同士がピッタリとくっつきます。
酷暑が続き、この膨張がある一定の範囲を超えると目地幅で吸収できなくなり反りや割れ、ささくれが生じます。
ささくれは、素足で歩くと足裏に刺さり危険なため、補修や張り替えが必要です。
木造特有のシロアリによる被害

シロアリは木材を主食とする昆虫で、木造の土台や床束、柱などを食べることで家の耐震性能が低下します。
そのため、木造の場合、地面から1mまでの防蟻対策が建築基準法に明記されています。
主な防蟻対策として、
- 床下への薬剤の散布
- 構造材への薬剤注入
- 基礎の隙間をふさぎ、シロアリの侵入経路をつくらない
などがあります。
床下は見えない場所なので、シロアリの被害は気付きにくいように思えます。
しかし、シロアリは新しい巣を作るために飛び立つ習性があり、羽アリを見つけることで被害を知ることができます。
被害が拡大しないように駆除業者を手配し、迅速な対策を講じましょう。
職人の力量に左右されやすい

木の家は、大工の力量によって仕上がりに大きな差が生じます。
なぜなら、現地で木材を加工するため、一定の品質が確保しやすい工場生産とは異なるからです。
隙間のない正確な接合部や木目が綺麗に揃った床材など、匠の技とも言える美しい仕上がりは見ていても心地よさを感じるものです。
木には癖があり、加工後もわずかに変形を続けます。
熟練した大工は、そのような性質をあらかじめ予測して、木材を使い分けます。
建物見学会を通して、出来栄えを観察したり、大工の教育に熱心な工務店をホームページで探したりすることで、確かな技術とノウハウを持った工務店を見つけましょう。
木は傷やシミが付きやすい

無垢材フローリングは柔らかく肌触りが良い反面、傷が付きやすいというデメリットもあります。
特に無垢材フローリングは、椅子の脚や物を落とした後の凹みが直ぐ付きます。
新築時は傷が気になりますが、傷が付くたびに直すというのは現実的ではありません。
しばらくすると傷も経年劣化のひとつと思えて気にならなくなるものです。
また、水に濡れたまま放置するとシミになることがありますので、乾いたタオルで直ぐに拭き取るようにしましょう。
木は雨や多湿に弱く腐食する

木材は雨がかかったり、湿気の多い場所にそのまま放置すると、やがて腐食して痩せ細ってきます。
これは、腐朽菌と呼ばれる菌が木材に付き、増殖するからです。
そのため、外部で木材を使用する場合は、保護塗料を塗って防腐対策をしたり、定期的に塗り替えて耐候性を維持する必要があります。
また、硬質な木材や脂分が強い木材は耐水性が高く、雨風に強いと言われています。
例えば、ジャラ、イペ、チーク、ヒノキ、米ヒバなどの樹種です。
それでも腐食は免れませんので、いつか作り直すことを前提で使うことになります。
家づくりに失敗しない方法

家づくりを失敗しないための一番の方法は、よく勉強することです。
木の家に興味を持ったら、木材の種類や構法、デザイン、プランニング、衛生設備、照明器具など、いろいろと研究してみましょう。
そして、何よりも「百聞は一見にしかず」です。
木の家のモデルルームに足を運び、目で見て、触れて、そして木の香りを深呼吸してみてください。
あなたも、きっと木の家が好きになるはずです。
専門雑誌や本からの情報収集
書店に行けば、木の家や自然素材の住宅専門雑誌や本がたくさん並んでいます。
工務店の紹介も兼ねた事例紹介がたくさん掲載されていますので、参考になるでしょう。
サイトを使った情報収集
建築予定地や希望地を入力するだけで、木の家や自然素材を扱う地域の優良工務店や工務店ネットワークを紹介してくれるサービスもあります。
無料で利用できるサイトを以下に紹介します。
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設計事務所に依頼する
自分で調べる自信がない方は、設計事務所に相談してみましょう。
インターネットや専門雑誌には、木の家を得意とする設計事務所がたくさんの広告を出しています。
建築士と聞くとなんだか敷居の高いイメージを持ちますが、そんなことはありません。
設計事務所に設計を依頼すると建設費の1割程度の設計料はかかります。
それでも、経験豊富なプロの視点であなたの家づくりを支えてくれますので、より理想に近い家を手に入れることができるとも言えます。